TrueEpisode1【違和感】

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             ● 「──で、結局休む暇すら無かったと?」 「ぅぷっ、腹が……」  あれから約一時間余りの時を経た。  レストラン内での昼食は穏やかに過ごせると思っていた自分を殴りたい。いや、冗談抜きで。  どうして手軽に済ませられるファーストフード店にしなかったのか、それだけが延々と頭の中を駆け巡る。 「いやー、まさか瑠璃と漆さんが慎に『あ~ん合戦』をするとはな。漫画やフィクションだけの展開だと思ってたよ、俺は」 「……笑い事じゃない」  けらけらと笑う幼馴染みに苛立ちを隠せない。 自分自信もこんな状態になるとは予想もしていなかったのだから。 「口いっぱいに物を頬張るハムスターみたいだったぜ。もがもがと必死に咀嚼を繰り返す様は傑作だった」 「……食べた気がしなかったよ」  せめて昼食時くらいは張り合わないで欲しかった。なんでこうもあの二人はウマが合わないのだろう。 「ま、今は瑠璃と漆さんが二人でパフェの早食い競争をしてるのが幸いか」  そう。あの二人はまだ店内に居るが、僕と秀一は会計を手早く済まして外で待っている状態だ。  食事を終えた家族連れやカップルたちをボーッと眺めながら、近くにあったベンチに二人して腰かけている。 「……暇、だな」 「……だね」  日向ぼっこも悪くはないが、どうも暇をもて余している。故に、意味もなく辺りを見回してみたりして。  高層ビルが並び立つ街中の人口密度は凄まじい。外回りのサラリーマンやOLに路上ライブや露店等々……。  見ていて飽きないし新たな発見もあり新鮮だ。  綺麗に敷き並べられた石畳の上を歩く人間たちは皆個性豊かであり、思わず感心。
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