TrueEpisode1【違和感】

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            ● 「──御注文は以上で宜しいでしょうか?」  喫茶店のウエイトレスの女性が、伝票を片手に注文の復唱をしていた。  慎を含めた四人が『以上です』と告げて、彼女は厨房へと早足で戻る。  そしてようやく慎は大きく息を吐いていた。 「結局、なし崩し的に連れてこられちゃったか……」  ここは喫茶【Elegant】。高級感溢れる外装と内装に、規律と教育の行き届いた給仕達が揃った所謂『一般庶民お断り』のお嬢様御用達の喫茶店である。  お嬢様御用達ということは当然の如く、周りの女性率は九十九パーセントを占めていて、その中で唯一の“黒一点”の存在が、哀しきことにも慎だけという状況。  やっぱり心休まる暇が無かった、訂正する。 「クスッ、そう怯えることはないわ。皆、貴方の整った容姿に見惚れているだけなのだから」 「はぁ……恐縮です」  輪廻に諭され、苦笑い気味にそれに頷く慎ではあったが、如何せんむず痒い。  さっきからやたら容姿を褒められるが、此方としては自覚がないので、あまり現実として受け入れなれない。  確かに周りの視線を否応なしに浴びてはいる、実際は輪廻自身に向けられた視線だと慎は思ってはいたのだが、 「あぁ、やはり御堂様と御命様は絵になりますわ……まるで芸術的な絵画を眺めているようです」 「ええ、さながら私達はそれを観賞する光栄な人間ですのね」  うっとりと頬を染め、状況に酔いしれた二人が眼前に座る慎と輪廻を見ながら素直な感想を漏らしていた。  確かに、好奇の視線を浴びている原因の一端は彼女にもある。
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