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いつからか、姉は血の繋がった僕に対して熱烈過ぎる好意を向けていた。
そりゃ姉弟とはいえ、二人とも年頃男女。全く劣情を催さない────といえば嘘になる。
鋼の精神で日々を耐え抜いていた。
「はぁ……とにかく出ていってよ。着替えてから 朝食も作らないと」
やれやれと嘆息気味に呟きつつ、慎は姉に対して退室を促す。
ちなみに、今更ながら自己紹介その二。
才色兼備の優麗優雅で、学園の女神たる存在 (身内が見ていない時)の姉。
「はぁん~、邪険にするなんてひどいよぉ慎く ん。漆お姉ちゃんはこんなにも弟のことを一人の 異性として愛しているのにぃ」
僕より一歳年上の自由奔放姉──【御堂 漆】(みどう うるし)だ。
悲しげな表情(絶対に嘘泣き)をする漆は、膝を崩しながら慎が眠っていたベッドに顔をうつ伏せにしてさめざめと泣く。
というか、
「好きでいてくれるのは嬉しいけど、僕たちは正 真正銘の血縁者だからね?お願いだから我を失っ て襲い掛かるのだけは勘弁してください」
辛辣な言い方だが、これも全て姉の事を思っての事。先制するように釘を挿しながら、慎はじりじりと漆から距離を取って扉へと背を凭れさせ る。
この姉、少しでも油断したならば一瞬にして襲い掛かるのだ。
その様子はさながら『獲物を仕留める猛獣』の如く俊敏さ。
毎度の恒例だからこそ、慎もより警戒心を強めて惨事に備える。故に、既に右足には力を込めて逃げる準備は万端。
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