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ヘタレ?
いやいやいや、経験者にしか分かりませんよこれは。
と、誰かに対して言い訳をした瞬間だった。
「……っ」
ざわりと、突如として空気が変わるのを感じていた。加え、慎はいち早く察知する。
何故なら先程まで悲哀に嘆いていた漆の様子が変わり、しんと静まったから。
……不味いっ。
出た。姉が発症する“病気”の前兆。
逃げろ、逃げなければと口内で反芻。が、それに反して体は硬直していて全く動こうとしない。
そして、漆がついに動いた。
「あぁ、ああああああっ!弟の温もりがタリナ イぃぃぃいいい!」
「イヤァァァアアア!?助けてぇぇぇえええ!」
均衡を破りさり、禁断症状さながらの状態で襲い掛かる発狂姉。
逃げようと駆け出すも、時すでに遅し。
慎はただ成す術もなく姉によって恐怖を刻み付けられるのみであった。
●
AM:7:50。
朝の喧騒もようやく治まり、朝食を済ませた休日の早朝時にて。
「にゅふふ~、慎くん」
「……はぁ」
げんなりと溜め息を吐き出しながら、慎と漆はリビングでくつろいでいた。
暇潰しに流す液晶テレビから映るニュースを眺めつつ、二人はソファーに座る。
いや、細かく説明すると違った。
慎がソファーに座り、その後ろから漆が抱きついている────というのが正しい。
後ろ首から両手を伸ばし、慎の胸の前で交差させつつ、顔は肩に乗せて密着。
『ベタベタ』というか『ベッタベタ』な感じで 姉が弟に甘えていた。
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