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神よっ、この横暴な妹に一矢報いる好機チャ ンスを!
救いの手よ、今すぐ俺の元へ!!
「……っ」
願う。とにかく願う。
こんな不幸な自分の状況を変える救世主様が現れてくれることを。
だが、案外神様は近くにいたようだ。
何故なら、
「──あれ?瑠璃ちゃんもお出掛け?」
「はひゃい!?」
並んで歩く俺と瑠璃を呼び止める声がした。
ビクッと、跳び跳ねるように肩を震わせたのは紛れもなく瑠璃であり、そんな過剰反応をさせる相手は他でもなく『アイツ』しかいない。
「よぉ、慎。タイミングばっちりだぜ」
「どういたしまして?」
素早く駆け寄って肩を組む俺。
お隣で幼馴染みの彼──【御堂 慎】がそこにはいたからだ。
まさに救世主さま!持つべきものは幼馴染みだよな!
「はわ、はわわわわわ!し、しししし慎さん!?」
我が妹ながら凄まじい動揺ぶり。まだまだ幼さは残るものの、端正な顔立ちは真っ赤に茹で上がっていた。
と、徐に手櫛で髪を整えてから『こほんっ』と軽く咳払いする瑠璃。
茶髪のセミロングが揺れ、毛先が空中を掻く。
態度が百八十度変わったと驚くことなかれ。これが『猫かぶり』の妹だ。
よく言うだろ?女は誰しも二面性を持ち合わせているってな。
「ぐ、偶然ですね!慎さんもこれからお出掛けですか?」
ぷっ、『ですか?』だってさ。急に『ですます』調になっても違和感が半端ないから。
「うん、奇遇だね。瑠璃ちゃんも秀一を荷物もちにさせてお出掛け?」
うぉいっ、まさかお前まで俺をそんな目で見てたのかよっ!?
感謝の気持ちが薄れちまっただろ。
「いえいえいえいえ!!そんなまさか!私がそんなコキ使うみたいな横暴なことはしませんよ!!」
ダウトっ!貴様は嘘をついている!!
さっまで俺を奴隷みたいに扱っていた上に、費用だって兄貴に払わせようとしてた!
「そっか、瑠璃ちゃんは優しい子だもんね」
「はぅ……」
頭の上に手を乗せ、慎は優しく瑠璃の頭を撫でていた。
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