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その間、僅か一時間もかからなかった。時間を合わせるために思いっきり走った。 切れかかった街灯の下、私たちは荒い息を整えた。家に入り、時間を確認した。 「あと10分ね…」 まだ時間は夜の10時にもならないくらいだった。しかしこの時間、外を出歩く人間はいない。たったひとりを除いては。 毎夜、決まった時間にランニングをするおばさんがいるのだ。 思った通り、10分後、彼女が通り掛かり、泣きじゃくっている私たちを発見する。しばらくすると警察が到着し、私たちは母に言われておつかいを頼まれたと言う。 死亡推定時刻は午後8時半から9時半の間。その時間、私たちはスーパーに買い物に行っていた。それは、レジで私たちを受けた店員が証言してくれた。時刻は9時45分、それはレシートを見れば分かる。家からスーパーまでは、子供の足では30分はかかる。第一、私たち子供に、こんな犯行は不可能と考えられ、私たちは容疑者から自然と外れた。 その後の調べにより、両親は、何人もの人間から恨まれていることが分かり、大方その人間たちの誰かによる犯行と、捜査が始まった。 それから私たちは、養子に出され、いまに至る。 これが、私の全てだ。
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