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ちょうどその時、夕焼けを厚い雲が覆い、雨が降りだした。
どうしてだろう。不思議だった。晴れているときよりも、雨が降っているときの方が、彼女がはっきりと見える。
しっかりと見開いた瞳は、まっすぐに自分を見つめ、小さな頬は赤く染まっていて、流れ落ちる涙はまるで、今まで隠し、溜めていたもの全てを流し出しているようだった。
「この過去を…本に残し、世間に知らせる。それが、私の贖罪…たとえフィクションだと思われても、これを読んだ人達の心に残る…そしていつの日か、真実を知ったとき、みんなは私を…私を
彼女は眼鏡を持ったまま、その腕で涙を拭い、笑って言った。
嫌いになってくれるでしょ?」
涙を拭いきれなくなった彼女は、どうしようもなく駆け出した。
フワッとした風が横切る。自分は、まるで自分の時間だけが止まってしまったかのように、しばらくその場を動けずいた。
彼女は図書館から立ち去り、その何もない図書館には、ただ、不甲斐ない自分と、雨の音だけが残った。
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