5/5
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
「はあ、はあ…」 やっと外へ出た。校門の前で息を整え、止まらない涙を、声を出して流した。 降り続ける雨は、淡く私を包み込み、私を少しだけ安心させた。 「彼はなんて?」 目の前に、姉がいた。黒い傘を差し、もう片方の手で、黄色い傘を持って。 きっと、ずっと校門の前で、私を待っていたのだろう。自分自身強くなんてないのに、強いフリをして、私に笑ってみせる。 それが彼女だ。 「…私を嫌いになったって」 姉は顔を下げ、悲しそうに言った。 「そうか…やはり私たちに恋愛は無理だな…?」 なんで。 なんでいつもそうなんだ。 姉が大学生になった時、一目惚れをした男がいた。 姉が初めてアルバイトをした時、意気投合して、好きになった男がいた。 しかし、姉は今みたいに、私たちに恋愛は無理だな そう言ってその恋たちを諦めた。 なんで。なんでなんだ。 「なんでいつもそうなの!?ねえさんは誰も殺してないじゃない!!私は殺人犯、この真実を隠して、本当に好きな人と一緒にはなれない…でも、ねえさんは違うでしょ?ねえさんは殺人犯じゃないのにどうして!?どうして自分の恋まで諦めるの!?」 外は暗くなり始めた。ぎゅっと拳を握りしめ、冷たくなっていく雨に、身を震わせた。頬を流れる水が、ふいに口の中へ入った。やはり、涙だった。 しょっぱかった。冷たかった。苦しかった。 こんなに私が苦しんでいるのに、姉は冷静に、優しく笑ってみせた。 「だって私たち、姉妹じゃない」 その言葉を聞いて気づいた。まるで姿勢を正すように、胸のつっかえを、全て洗い流してくれた。 私たちは、同じなんだって。同じ苦しみのもと、一緒に生きているんだって。 やっと気づいた。 そして姉は「ん」と私に傘を差し出した。 私は、少し恥ずかしそうに「ありがと」なんて言いながら、その傘を受け取った。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!