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「はあ、はあ…」
やっと外へ出た。校門の前で息を整え、止まらない涙を、声を出して流した。
降り続ける雨は、淡く私を包み込み、私を少しだけ安心させた。
「彼はなんて?」
目の前に、姉がいた。黒い傘を差し、もう片方の手で、黄色い傘を持って。
きっと、ずっと校門の前で、私を待っていたのだろう。自分自身強くなんてないのに、強いフリをして、私に笑ってみせる。
それが彼女だ。
「…私を嫌いになったって」
姉は顔を下げ、悲しそうに言った。
「そうか…やはり私たちに恋愛は無理だな…?」
なんで。
なんでいつもそうなんだ。
姉が大学生になった時、一目惚れをした男がいた。
姉が初めてアルバイトをした時、意気投合して、好きになった男がいた。
しかし、姉は今みたいに、私たちに恋愛は無理だな
そう言ってその恋たちを諦めた。
なんで。なんでなんだ。
「なんでいつもそうなの!?ねえさんは誰も殺してないじゃない!!私は殺人犯、この真実を隠して、本当に好きな人と一緒にはなれない…でも、ねえさんは違うでしょ?ねえさんは殺人犯じゃないのにどうして!?どうして自分の恋まで諦めるの!?」
外は暗くなり始めた。ぎゅっと拳を握りしめ、冷たくなっていく雨に、身を震わせた。頬を流れる水が、ふいに口の中へ入った。やはり、涙だった。
しょっぱかった。冷たかった。苦しかった。
こんなに私が苦しんでいるのに、姉は冷静に、優しく笑ってみせた。
「だって私たち、姉妹じゃない」
その言葉を聞いて気づいた。まるで姿勢を正すように、胸のつっかえを、全て洗い流してくれた。
私たちは、同じなんだって。同じ苦しみのもと、一緒に生きているんだって。
やっと気づいた。
そして姉は「ん」と私に傘を差し出した。
私は、少し恥ずかしそうに「ありがと」なんて言いながら、その傘を受け取った。
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