第三章 夜の蝶

8/8
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
 それこそ、日本最大の『なばなの里』のイルミネーションにも引けを取らないくらい美しいものだった。 「ヨルナミの正体はさっきの筋肉人形どもだよ」と。二人が消えていく最中、ヨツヤさんは静かな口調で話し始める。 「カメラや鏡には写らない、人の肉眼のみに映る化け物だ。やつらは人を襲い、襲われた人もまたヨルナミとなる。私たちMIBのいた星はそれで人の住めぬ場所となってしまい、残された者だけがこうして宇宙をさ迷い、他の星を視察しにきている。逃げたやつはいないか、他の所にもいないかと。そして私はこの星で奴等を見つけた。だからこそ私は他のMIBの連中を説得し、ここでヨルナミの駆逐を始めたんだ。奴等を外へ逃がさないようこの星の周りに壁を造ってまでしてな」  言って、左手を僕に差し向けたヨツヤさん。  僕はその手を取って立ち上がる。  氷のように冷たい手だった。  ふと、そこで僕は疑問に感じた。  例の監視カメラの映像を見た限りでは、人々は何かに襲われると言うよりかはむしろ、何かに連れ去られているように見えたのだ。  だとしたら、ヨルナミに襲われた今までの被害者は一体どこへ行ってしまったのだろうと。  まさか本当にヨルナミにされ、殺されてしまったのではないだろうか。 「じゃあ、僕の母さんは一体……」 「フフ、安心したまえ。太陽を遮蔽してからの被害者は全て被害を受ける前にこちらで保護している。知らぬフリをして悪かったな。ここに呼び込んだ全てのヨルナミを駆除したら返すつもりだったんだ」  微笑を端麗な顔に浮かべるヨツヤさん。  そんな彼女を間近で見るのが気恥ずかしくなり、咄嗟に僕はその首元へと視線を移した。 「ヨツヤさん……」  睡魔が襲ってきたらしく、徐々に瞼が重くなっていく。  言いたいことは沢山あるのに、僕はそれを言い出せずにいた。  ジンワリと目頭が熱くなり、安堵の涙が僕の頬を伝った。  その時だ。  僕が奇妙な眠気に倒せる直前、彼女は優しく僕の頭に手を乗せてきた。 「今までありがとうな、羽鳥、私に付いてきてくれて。お前のことは嫌いじゃなかったぞ」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!