エピローグ

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「はいカット! 休憩!」  東京のとあるテレビ局のスタジオ。  監督の声が高らかに響いた。  僕は今そこで、来月放送される『夜の蝶』というドラマの主人公・羽鳥尊を演じている。  最後の四ッ谷六実と対話するシーンのテイクは既に二十を越えていたものだから、休憩の一言を聞いただけで肩の荷が降りた気がした。  そして僕は、目の前にいる四ッ谷六実役の葵みどりさんに「おつかれさま」を言い、部屋の隅に用意された椅子へと向かった。 「いいねぇ、今の良かったよ尊くん……じゃなくて高岸くん」 「はは、ありがとうございます」  向かう途中、僕を誉める上機嫌な監督に、僕は頭を下げる。  これでも結構疲れている方だから水でも飲んで早く一休みしたかったのだけど、またもや監督が僕の肩を掴んで引き留めたのだ。 「いやぁ、それよりもさ、高岸くん。この脚本書いた人凄いねぇ」 「まぁ、確かに凄いと言えば凄いですよね、ヨルナミの存在とか」  と軽く僕は受け流す。  でも、 「そうそう、だってさ」  あまりにもしつこいものだから、振り替える。  振り替えって、目を疑った。息が止まるかと思った。  思わず監督の手を振り払い、大きく後ろに退いてしまうほど。  だってそこには、 「ボク達ホントにいるんだもん」  人体標本の化け物が立っていたのから。
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