E☆エブリスタ公式アイドル

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  果たして、新着メールには『犬咬シド』の名前があった。恐る恐る、もう一度タッチ。 『おい せっかくアドレス教えたんだから何かメールしろよ』 「はうっ……!?」 取り落とした携帯電話がぼふんと布団に滅り込む。 既に嫌われた? 機嫌悪そうだし、絵文字も顔文字も無いし、句読点すら無いなんてっ!? いえ、そんな事はどうでも良いのよダークスノウ、まだ彼にイカゲソ神族の洗脳は及んでいないわ喜ぶべき事なのにうわあぁん!! 制服が皺になるのも厭わずどたばたと床を転げ回った挙げ句、箪笥の角に足をぶつけて、 「はんぎゃっ!!」 脊髄を駆け上がる痛覚にびくんびくんと痙攣し、力無く布団に俯せる。 「ううぅ……」 よろよろと左手を伸ばし、涙目のまま携帯電話の液晶画面を覗き込むが、当然ながら文面に変化は無い。 時空間操作系の能力があれば文面も変えられそうなのに。野雪乃は攻撃系に片寄った自らの能力を恨めしく思いながら、よたよたと階段を降りるのだった。 女登呂第四中学校は既に期末試験と答案用紙返却を終えて、本日をもって一学期を終了する。くるくると景気良く回るトーテムポールがずらりと立ち並ぶ学校前のアスファルトは真夏の陽光を照り返し、じりじりと容赦無く生徒達の肌を焼く。   「はよはよー、ゆきゆき!!」 校門に入ったところで能天気な声音が響き、後ろから肩を叩かれる。振り返れば、天真爛漫な光を瞳に宿した二つ縛りの女子がにっと笑っていた。 「何だ、誰かと思えば、ハレ」 「またまたそんな事言って、ゆきゆきの友達なんてあたしくらいじゃまイカ!」 ずけずけと馬鹿にして来るが、月野雪乃は臆さない。いや、臆する必要など無いのだ。 「当たり前だ。そう易々と組織関係者以外に関わるわけにはいかない」 「うひゃひゃ、そっかそっか!」 月野雪乃のクラスメイト、天野晴。一見普通の女子中学生だが、実は過去に『邪魔烏賊』のエージェントだった事がある。組織を抜ける際には必ず記憶を消される筈なのだが、天野晴は月野雪乃と接触した事で部分的に記憶が甦ったと語っている。 「それで、ハレ。何の用?」 「用っていうか、教室まで一緒に行こーぜいっ、みたいな」 「何だ。記憶が戻ったのかと思った」 「そんな簡単に戻ったら寧ろダメでしょー。あ、それはそーとゆきゆき、またやったね!!」 「何が」 「期末だよー。2位と20点差なんて凄いよ、ダントツじゃまイカ!!」  
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