E☆エブリスタ公式アイドル

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  「はい」 『もしもしハロハロゆきゆきー! 今大丈夫?』 前半のは何の呪文だろう、相手の心を開く魔法かな。などと前頭葉に滞留する迂遠な思考を振り切って、答える。 「うん。どうした、組織関連の話?」 『うんうんそうそう、いやいやちゃうちゃうかな? どっち?』 「知らないし……」 何でこっちに聞いた。   『それよりゆきゆき、凄いよ、あたしたち超ラッキーだよ!!』 「ん、何が?」 『さっき友達から聞いたんだけど、手力発電所でカミツキ・シドが一日所長やるんだって!!』 「……。はう?」 何がどうラッキーなのか、話の筋が全く見えない。ただ、シドという名前だけが妙に耳へこびりつく。 『あっ、もしかして忘れてる!? ほら、宿題っ、職場見学っ!!』 「あ……」 言われてはっと、思い出す。夏休みの課題、職場見学の行き先が、二人そろって手力発電所に決まっているのだ。見学の日取りは自由なのだが、何とまぁ、面倒臭い。 『思い出した? まったく、勉強はできるのにそゆとこ抜けてるよねー、ゆきゆき』 「組織の活動を最優先にしてるのだ。それで、何? 一日所長がどうとか?」 『え、まさかゆきゆき、シド様を知らない?』 むっ。月野雪乃の表情が曇る。何やら知らないとまた馬鹿にされそうである。 「その記憶はかつてイカゲソ神に奪われた」 『うっそ、信じらんない! テレビとかめっちゃ出てるじゃまイカ!!』 「我らが組織『邪魔烏賊』には洗脳機関MHKに無用な料金を払う余裕など無い!」 『オーマイガッ! 『邪魔烏賊』どんだけ資金ねーんだ、そんなんでイカゲソ神とか倒せんのかっ!!』 「何を言う、金ではなく魂で戦うのだ!!」 結局、話は脱線して二十分近く時間を浪費した。 要するに天野晴は『シド様がいる日に行って退屈な職場見学を薔薇色に染めようぜ作戦』を実行に移したいらしい。決行は三日後。 断る理由も無いので承諾した。 『さっすがゆきゆき! どっかの堅物委員長とは違うぜい!』 駅ではクラス委員と喋っていたのか。 「当前。あんなイカゲソ神のための施設、破壊するならまだしも見学など真面目に取り組む価値も無い」 『うひゃひゃ、だよねー! あ、そうそう、シド様の事なんだけど』 「ん?」 『ゆきゆきがやってるサイト、『E☆エブリスタ』だっけ? あそこで公式アイドルもやってるらしいよ! 知らないなら探してみなよ!』 ……何だって?  
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