結末の書架

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薄暗い部屋だった。まだ時計は4時過ぎを指しているというのに窓からの日差しはなく、天井に咲いた小さな電球だけが頼りなく揺れながらチカチカと瞬く。 なにもかも、空気すらも埃をかぶり淀んでいる。ただ、少年の悲痛な叫びだけが生々しく響いていた。 「お願いです。 私に魔法学を、世界を動かす力を」 軍服に皺が寄り、彼の頭から軍帽が滑り落ちた。若き英雄の胸に光る勲章も空しく音を奏でる。 「……なにを今さら」 しわがれた声が、地を這うように静かに呟く。目の前の老婆は濁った瞳で彼を眺め、ふんっ、と鼻を鳴らした。 「自らの支配欲に溺れ、我々を追いやったのは貴様達だろう。……同志も随分と減った」 「あぁ、ババ様……お願いです、私に魔法学を。世界を動かす力を」 少年は壊れたテープレコーダーのように同じ言葉を呟く。 「軍人が魔女に頭を下げるとは滑稽なことだ。そうは思わないかね、カルッソ」 「お願いします、私に力を……」 カルッソと呼ばれた少年の頬から、涙が溢れる。口から漏れるのは懺悔の言葉にも似た悲痛な願い。糸の切れた操り人形のように崩れ落ちた彼の雫が、二人を穿つ境界線に落ち、静かに滲む。
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