2章 新撰組

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月明かりしかないので顔はよく見えないけど、身動き一つせず私をじっと見ていることはなんとなくわかった。 黒い塊を見ながら歩いていくと距離が近づくにつれて顔がわかるようになってきた。 その人は鋭い目付きで睨むように私を見ている。 「こんばんは...。」 話かけてみても何も返答はない。 えっ、めっちゃ怖いんですけど。 変質者か何か? 怖くなってきた私は会釈をしながら横を通り過ぎようよした。 その瞬間ーー。 「待て。」 そう言って男は私の左腕を掴んできた。 私は驚きすぎて声も出ず、必死に腕から逃れようよ力を入れて引っ張る。 ヤバい、挨拶なんかしたから変質者に絡まれたんだっ。 「おとなしくしろ。その黒い物はなんだ?」 男は背中にあるギターケースを指差した。 その言葉に私は動きを止める。 「何って、ギターですけど...。」 「ぎたぁ?...それは武器か?」 その言葉に目を見開く。 ギター知らないってどういうこと? この人頭おかしいんじゃないかと思ったが、腕を掴まれている以上下手なことは言えないと思って普通に返す。 「いや、普通に楽器ですけど...。知らないんですか?」 「そんな妙な名前の楽器は知らん。とりあえず屯所へこい。」 男は私の腕を引っ張りどんどん前へ進んでいく。 私は我に返り、止まろうと足に力を入れるが、全然止まらない。 「暴れるな。」 男がそう言うと、キラッと光る何かが目の前にあった。 軽く掴んでみると掌に痛みが走る。 驚いて手を離して目を凝らして見てみると、それは月明かりに照らされて一筋の光を作り出していた。 日本刀…ーー? 「もう一度言う。暴れるな。」 私は首を縦に何度も振ると、おとなしく男に着いて行った。
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