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「監督!!何か御用でしょうか?」
少し離れた場所から声をかけると、監督がこちらを向く。
厳しい顔で私を見ると急に怒鳴りだす。
「おい、柿本!!お前荷物整理にどんだけ時間かかってんだ!こんくらい一時間で終わるだろ!?女だからって甘えてんじゃねぇよ!!」
「甘えてるつもりはないんですが、そう見えているならすみません。以後気をつけます。」
イライラする感情を心に押し込め頭を下げる。
「頭下げたら許されるとおもってんだろ?なんで女なんて入れたかねぇ!ほんと使えねえ!だから嫌だっつったんだよ。男社会をなめんじゃねぇぞ。」
ぶつぶつ言いながら、私の元を離れていった。
そう、監督の新田真とは短大を卒業して、某建設会社に入社してから2年目の付き合いだ。
「入社1年目の柿本詩織です。よろしくお願いします!」
そう挨拶すると眉を顰めた監督はこう言い放った。
「現場に女が入るなんて俺は認めねぇ!」
ズカズカと歩いて出て行く監督を、呆然と見送った。
初めの頃は、反発して言い合いになったこともあったが、目上に意見するなんて常識がないだとか、女の戯言につきあってられねぇだとか言われ、今では謝るか笑顔でやり過ごすことにしている。
まぁ、社会なんて嫌なことでも我慢するのが当たり前だもんね。
みーんなこうやって生きてるんだと思うようにした。
もの思いに耽っていると私を呼ぶ声がする。
その声は高い場所から聞こえる。
上を見ると田所さんだった。
「柿本ー、ちょっと登ってビス止め手伝え!」
「了解!」
そう返事をすると、足場を登り田所さんのところに行く。
インパクトドライバーを手に取り、ビス止めをしていく。
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