1章 2013年

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「今日は何言われたんだ?」 田所さんはニヤニヤしながら私を見る。 「荷物整理に時間かかりすぎって言われましたよ。」 うんざりとした表情で荒々しくビス止めをしながら答えると、田所さんは鼻で笑い、気にすんな!と言って私の肩を2回トントンと叩く。 私は手を止めて田所さんに向き合うと苦笑いを浮かべる。 「慣れっこですからね。気にはしませんけど、何であんなんなんですかね?」 前から気になっていたことを呟くように言うと、田所さんは手を止めて振り向いた。 その表情はこれでもかと言うほど目を見開いて驚いているようだった。 「え?気づいてないの?監督ってお前のこと好きだろ?小学生が好きな子いじめるって感じのやつ。」 その言葉に驚き手を止め、心底嫌そうに自分の体を抱き身震いさせる。 「いやー、嘘でもやめて下さい!!タイプじゃないし。」 そもそも顔がタイプだったとしても毎日怒鳴ってくる人を好きになる人なんているんだろうか? いるもんならぜひ見てみたいものだ。 「でもさ、彼氏いねぇんだったらちょっとくらい考えてあげてもいいんじゃねぇ?」 「彼氏必要ないですもん。」 「なんで?」 田所さんはビス止めを終え、片付けをしながら聞いてきた。 私は田所さんを無視して、ビス止めを続行する。 「おい~!」 そう言うと、肩をガクガク揺らしてくる。 めんどくさい。 私が恋愛しようがしまいが関係ないじゃないか。 そう思いながら、軽く睨みつけるように田所さんを見る。 「今は仕事中ですっ!!真面目にやるっ!!」 そういい、田所さんをビシッと指をさす。 「は~い。」 そう言うと捨てられた犬のようにシュンとした顔で足場を降りていく。 からかわれようが、こういう可愛い部分かあるからか、なかなか憎めない人柄だ。 足場を降りていく田所さんを見つめながら、ボソっと呟く。 「人間言いたくないことくらいあるでしょ...」
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