1章 2013年

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仕事が終わり帰宅すると、汗でベタベタな体を洗い流す為にシャワーを浴びる。 今日は帰りに監督に会わなかったから小言を言われずにすんだ。 たったそれだけのことなのにとても機嫌が良かった。 鼻歌を歌いながらを体を拭くと、ショートパンツとTシャツに着替えてキッチンへと向かった。 冷蔵庫から昨日の残り物の肉じゃがを取り出してカレーへとアレンジさせる。 これがけっこう美味しいんだ。 「ご馳走様。」 就職してから一人暮らしの為誰からの言葉も帰ってこないが、やはり癖で言ってしまう。 そのせいで少し寂しい気持ちになる。 食器は帰ってから洗おうと思い、食器を流し台へと持っていった後、玄関先に用意しておいたギターを背中に掛けていつもの河原へと出かけた。 「ここは変わらないな...。」 河原につくと空を見上げてそっと呟く。 今日はオレンジがかった満月だ。 月の光が照る中、ギターケースからギターを取り出すと深呼吸を弦をピックで弾く。 目を閉じ、自分の中から何かを吐き出すかのように感情をのせて歌っていく。 こうやっていつも自分の心のケアをしてる。 じゃないと自分がいろいろなものに押し潰されそうな気がして。 歌い終わった後、体がガタガタを震える程風が冷たいことに気づいた。 「寒っ!」 夏なのになんでこんなに寒いんだと不思議に思いながら、体を擦るが体はどんどん冷えていく。 暫く仕事続きだし風邪を引いたら監督にまた何を言われるかわかったもじゃない。 帰ろうと思いギターをケースへ戻して背にかけて立ち上がると、元来た道へと歩き出した。数歩足を進めて前を見ると、そこには黒い人影のような物が目に入った。
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