vsブルーラビット ROUND2

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      ◆◆◆ 「どうだ、ウチの美術スタッフは優秀だろ」 「赤ずきんのオオカミの気分ですよ」 「そうかい。ま、ベッドに入ってるのは赤ずきんだがな」  本社に帰り、特殊メイクを落として服を着替えていた所、社長に声をかけられた。  少し間を置いてから訊く。 「社長」 「あん?」 「この業務は、誰かの恨みを買い続けないとやっていけないのでしょうか」  僕には僕の家がある。家族がある。兄弟がいる。フリーターの僕もいつかは家族を養っていかなくてはならない。それでも、誰かの人生の最後に嘘を置いていく仕事をする今の僕に、堂々と家に帰る価値はあるのだろうかと思えた。  しばし思慮した後、無精髭を掻きながら社長が答えた。 「生きていない人間を装ってんだ。まぁ、神への冒涜だわな」 「お客様にとって最高の最後を提供する筈の私達は、その最高の最後の後に、何よりも深い憎悪を向けられてるような気がするのです。その負の感情の呪縛から放免される日は来るのでしょうか」
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