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中央病院の4階から見る夜の風景は、近くの河原で放たれた打ち上げ花火の光によって、瞬間的にだが遠くまで見渡す事が出来た。
空に落ちていくように上昇して、派手な残響と瞬間だけを残して消えていくサマに人々は人生の縮図としての形容を見いだし、「花火のような生涯」という言葉を作り出した。
早い話は、「太く短く生きる」という言葉を別の表現に置き換えただけなのだが。
それなら。
ベッドに寝たきりでいるこの齢88の「お客様」は今までどんな花火のような人生を歩んできたのだろう。
細く長く。のらりくらり。
きっと、長続きする線香花火が一番近いんだろうな、と内心で合点をうった。
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