永久の記憶

15/16
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「アタッカーは背後から仕掛けろ!タンク以外は奴の前に出るな!」 セシルの言葉に従い、比較的軽装な近接戦闘職のプレーヤー達が背中側に移動する 対して鎧を身につけた重武装のメンバーは奴の視界に入る位置に陣取り、適度に交代しながら攻撃を続けている 配置を確認したセシルも危ないポジションはタンクの連中に任せ、高い攻撃力を生かして戦列に加わる 後衛から放たれた矢が右目の視界を奪い去り、自棄を起こしたタラスクが一層暴れ始める 木々を薙ぎ倒しながらのた打ち回るその姿は、誰の目にも常軌を逸した存在として映し出されていた 血涙を垂れ流しながら、怨念の籠もった瞳で人間達を睨みつける それは、最期の瞬間を悟った獣そのものであった 本能的に危険を感じ取った大男が戦斧を振り上げ、切りかかろうとした直後 雄叫びを上げたセシルが大剣両手に突進し、派手な血飛沫を巻き散らせて鱗を叩き割る 青色に発光する刃には大量の血液が付着し、滴る紅い液体が寸断させた頭部と共に森へ落ちていく 残されたのは首から下のみの巨龍の亡骸と、獲物を奪われ、呆然と漂う大剣の持ち主であった 「よく考えたら、最初からこうすれば良かったな」 眼を細めながらぶつぶつと漏らす彼は、保有者の元まで近づいて来ると、重量感に溢れる大剣を軽々と投げ渡した 慌てて受け取った青年が困惑した表情を浮かべる 「アイツの行動をいちいち理解する必要はないぞ。マトモな奴じゃ、理解しようとしたところで理解できん」 優しく肩に手を置いた大男が、慰めるような口調で語りかける
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!