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 いつもどおりの電車に乗って、大学に着く。教科書はほとんど入っていないのに、なぜかパンパンに膨らんだ鞄を椅子に置いて、自販機でペットボトルのお茶とパンを買う。いつもの私の朝の日課。私の学部は女子が多いからか、ラウンジにはなぜかパンの自販機まで設置されている。  3年間、大学には真面目に通ってきた。もちろん、たまには遅刻したり、魔が差して授業をサボったりしたことはあるが、そんなのは数えるほどだ。だから、4回生になってほとんど授業がなくなって、なんとなくだらけてきていた自分に喝をいれようと、授業もないのに学校に来てみたのだ。  たまに、私と同じようにここでご飯を食べていた陽子は、4回生になるなり就職先も内定し、残りの四回生生活は全て、午前中は寝ると宣言していた。 はぁ。内定も決まっていない私は一体何をしているんだろう。  ここ一ヶ月、ずっとこの考えが私の頭を支配してしまっている。こんなに朝早く来たところで、誰が見ているわけでもない。まだ授業までには40分もあるのだ。早起きしても得られるものなんて、贅沢に悩む時間くらいということなのだろうか。  華の女子大生なら朝食はさっさと済ませて、お手洗いで化粧が崩れてないかのチェックでもするのだろう。でも私は、そんな華やかな生活には溶け込めなかった。かといって、世間から一目置かれるような頭があるわけでもなかった。 今日大学へ来たのだって、ある意味ゆるやかに続く惰性の延長線上といっても過言ではない。  こんなことをぼんやり考えていたから、人が入ってきたことに全く気づかなかった。いつの間にか朝食のパンを食べ終えていた私は、なぜかパンが入っていた袋がないことに気づいて、やっと人の存在を認めた。
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