8人が本棚に入れています
本棚に追加
しゃがみ込み、見下すような姿勢になる男。
「せっかく起こしてやったってのに、うるさいだと?お礼と言う言葉を身に染み込ませてやろうか?」
「普通に嫌だけど」
言葉に即答されて、今にも殴り掛かって来そうな男の目が。
それをなだめるように、立ち上がって自分なりの丁寧な口調で男に尋ねた。
「ここはどこですか?そしてあんたは誰」
「はっ!そんなこと分かってりゃあ、お前なんか無視して帰るっての」
男は苛ついた態度を抑えると、言葉を続ける。
「たまたま通った道にお前が寝てたから、何か知ってるんじゃないかって思って起こしただけだよ」
……やっぱり。こいつはうるさい。
にしても、自分は何でここにいるんだ?
思い出そうとしても、何も浮かんでこない。
心当たりのある単語の一つすらも……。
まるで、自信の記憶そのものが消えたみたいに頭の中が真っ白。
「……まさか、お前も何も思い出せないのか?」
こちらの顔色を見て、おおよその事は理解したであろう男はそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!