依頼その一/秋の朝にて/

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ここここです、と店員が地図を持ち出し、二人は簡単に説明を受けると、すぐさま天神は動き出した。宝辺はその機敏な動きに慌てるようにして付いていった。 そのまま聞いてみると、天神は我関せずといった風でタクシーに手を振り上げていた。 「へい、タクシー」 「ちょっと、おい、どうする気なんだ、おい!」 「説明は行きながらする。早く乗れ」 有無を言わせぬ天神の口調に釣られた宝辺は、そのまま指示に従ってタクシーに乗り込んだ。天神はタクシーに行き場所を告げ、なるべく急ぐようにとも付け足した。 「何が、どうなってる」宝辺は聞いた。つまりは宝辺の脳内ではまだ状況が掴み切れていないのだった。天神はじれったそうにして答えた。 「つまりは、品評会だ」 「品評会?あ!それでか。猫なのか!?」 「そう。分かってるじゃないか、君。猫がもしかしたら品評会に出されて、もしかしたらオークション形式に売り飛ばされてしまうかもしれない。それが最も恐怖すべき点だ」 「売り飛ばされたら、最悪だな」 「ああ、その通りだ」 タクシーは雨の降り始めた往来を走り始めた。
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