依頼その一/秋雨と猫と店主と/

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 品評会の会場は豪華な外観であった。ガラス張りに日光をこれ見よがしに反射し、いたるところが煌めきを放ち、角の立った部分が特徴である華麗なその建物は、無音ながら常に来る者拒まずの体を取り続けているかのようだった。  ガラス張り、及び広い庭園も目に付く。木々が所々に整然と立ち並び、現在は秋であるが心的な涼感を醸し出していた。  そこに乗り付けたは、トレンチコートに身を包み、一人はグレーの帽子を浅めに被った、長身と平均的身の丈の男。  二人は、特にその内の一人、、天神はその豪華に輝くガラス張りをしっかりとした眼差しで一睨みしてから、その場を後に奥へと進んだ。  玄関ホールは広かった。天井も高く、左手には軽い螺旋式の階段もついていた。二階があるようだった。受付には紺の清潔感のあるパリッとした制服を身に着けた女性が二人、応対にあたるようだった。二人はその前へと進んだ。 「これこれという者だが」  天神は名刺を差し出した。そこには『総合相談所ヨロギ』と書かれてあった。これは宝辺が考え作成したものだ。これまでにも何度か活用したことがあった。  その度の相手方の反応はというと、皆殆ど同じようなものだった。  「はあ」小首を傾げ、何とも了解してよいかどうか逡巡するような顔つきをする。複数人いた場合は、その者に一時判断を頼る形を取った。  今回も宝辺の案の定、受付の二名の女性は妙な目をして、一人がもう一人にも名刺を見せた。二人とも次には目つきが残念ながら厳しいものに変わってしまった。
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