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天神は声がしたらしき方へ顔を向けて、言った。
「ただのなんでも屋だ!しかし今回は、刑事だ!以上!」
すると俄かに、閑静だったホール内がざわつき始めた。
「刑事!?刑事だって!?あいつ、そう言ったか」
「だとすると、面倒なことになる前に我々もお暇(いとま)するかね……?」
「馬鹿を言え。まさかあんた、あんなやつの言葉を鵜呑みにするつもりかい?」
そこここでそんな呟きに満ちたざわめきが起こった。次第にその騒ぎ方は規模を徐々に増し始め、やがて騒音程度にまで膨らみ始めた。
天神の横のタキシードの男はもうすっかり首を落として、あきらめた風な体裁を見せていた。
その頃合いだった。
「来たか」
そうしているうちに、程なくしてホールの扉が激しい音を立てて開いた。
それは、豪奢な婦人という新たな来客であった。それを見た天神は、大層満足げにニンマリとした。
息を切らす婦人の傍らに立つ宝辺は、天神の立つ壇上を見つけるやいなや、ビシッと強く親指を立てた。
その顔は、満面の笑みであった。
そうして天神は、眼下にこちらに走り寄る婦人と、横目にふてくされたように項垂れる雑貨屋の店主を見ながら、そっと呟くのであった。
「チェックメイト……」
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