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「ああ、これで良かったんだな」宝辺は言った。
見つめる先は、何故だか壁に張り付けた一枚の小切手。
「あのご婦人、感激の余りかなり奮発していったぜ。というか、もらいすぎだと言いたいんだが」
「いいじゃないか。あの婦人にとってはそれ程大切なものだったんだろう。動物をもの呼ばわりしてしまう俺には良く分からんことだが。……それにこれで」
「これで?」宝辺は天神を見る。ソファに埋もれすぎているせいで天神の頭は見えない。プカプカと形を変えながら浮かぶタバコの煙が見えるだけだ。
天神は言った。
「当分、君の好きなお暇ができる」
その言葉に宝辺は苦笑した。加えて返答した。
「暇は好きでもないさ。金はあっても、何かあった方がいい。今回みたいな、ちょっと意外なものとかさ」
「おや、それはそれこそ俺にとっては意外だなあ。てっきり俺は、君は働かなければそれだけそれを幸せと感じる性質だと思っていたんだが」
「そうでもないさ」宝辺はまた壁の小切手を見た。
「また記録でもつけるかな。今回の事件はなんて名にしよう」
「よせよせ。今回みたいなのは簡単すぎて、つけても何となくつまらんだろう」
「そうか?俺的にはなかなかに面白かったんだが。謙遜もあまり良くないぜ?」
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