何でも屋「よろぎ」

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チリチリン。呼び鈴が鳴ったのはそんな時だった。口には出さないまでも、音に反応しトーストを置いてそちらに向かう宝辺の胸に「ひどく下らねえ」という侮蔑の感情が起こったことは否めない事実であった。しかし、呼び鈴は違う。扉を開けた。 「はい。どちらさんで」 「あのお、依頼に来たのですけれども」 服装はマダムチック。秋を思わせる淡い土色のコートと少し厚化粧の、ふっくらとした頬。厚そうなブーツも暖かそうだ。 宝辺はゆったりと、しかし機敏な動きで女性を奥へと導く仕草をした。 「外はお寒いでしょう。ささ、どうぞどうぞ。あ、お足元にお気を付けて」奥にはムッツリ顔の天神がトーストをかじって待っているのだ。
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