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「じゃ、じゃあ…それだけ、だから…」
その沈黙をどう受け取ったのか、ヒナタは焦ったように医務室をあとにしようとする。
「あ…ヒ、ヒナタ様!」
柄にもなく大きな声が出た。
ヒナタの足が止まり、こちらを振り向く。
「あの…ありがとう、ございます」
「えっ…」
ぎこちなく、小さな声にしかならなかったが、ヒナタにはちゃんと届いたようだった。
「…ううん……お、お大事にね」
心なしか赤く染まっているように見える頬を隠すように、そそくさと病室を出て行くヒナタを見送る。
ヒナタが出て行った後。
ヒナタのくれた傷薬を両手で包み込むように握ると、まるで心まで包み込まれるようで。
ネジは、自分でも気づかないうちに微笑んでいた。
-fin-
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