流れる音色

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(どうする?)  中から聞こえる声が神妙な声で聞いてきた。 「嫌な予感がするよ。あの時みたいに」 (あなたはいつもそう吠えているでしょ) 「あはは。そうかもね」  自分の言いわれように苦く笑う。 (心配しすぎ~)  声の相手は冗談っぽく言った。彼女らしい緊張感のない様子に微笑んだが、そのままの空気に流されないように言う。 「とりあえず力を使うしかない」 (協力してくれとは言わないんだ…)  その言葉を無視して、軽く目を閉じる。霊力、魔力、妖力。実際に存在するかも分からない曖昧な存在のあるとするならば、そのどれとも言えるような力の流れを感じ、少女の居場所を探す。  自分の能力があれであるからこそできるようになったものだった。彼女だけが有するそれを探し当てる。氷の中に存在する仄かな灯、闇の中に存在する小さな光。それを感覚で感じた。  その瞬間、弾かれたように飛び出す。  家の間を飛ぶようにして駆け巡り、少女の位置に向けて走る。 (どうしたの?)  驚いたような声にこたえる暇はない。今持つ全力を使うだけ。 (あの時と一緒のようね。これではあなたが悪魔にでも取りつかれているみたいです) 「出来れば、俺より速く行って、対応してくれ」 (すでに進めている)  まったく、この二人は本当に抜け目ない。随分と長く居過ぎたせいかな。  ……こんな急いでいる時に何を考えているんだ。  自分がまだこの空気に馴染めていない、それとも忘れていると思える。その考えを払拭した。  今、考えるべきことは目の前のことだけ。
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