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あの化け物は私を殺そうとした。その刃を私に向け、殺意をもって襲った。
死にたくない。私を殺そうとするそれが怖い。
少年に感じていた死よりも、明確に向けられたものに対する恐怖が体を縛りつける。
目の前の少年はその存在と私の間に入るかのように前に進む。
「てめぇに拒否権はねぇ。わかってんな?」
彼が右手を真横に出す。すると彼の周囲の影が彼に向けて伸びる。よく見ると影よりも黒い、液体の金属のようにどろどろとしたものが彼の腕に伸び、彼の腕を包むと弾けた。
花火が開くように弾け、その中央である彼の腕には黒い刀が握られている。
「俺達は契約の生き物。契約によって全てを成り立たせる。それが俺達の生き方」
彼の周囲の黒の塊が地面から上に伸び、風に揺られて靡く。
「俺達には名前がない。なぜなら俺達のような存在には必要のないものだからな。だがてめぇらの世界には必要であり、俺は名を与えられた。俺の名はツクヨ」
少年の顔がこちらを向いて微笑んだ。
「俺は名を言った。今度はてめぇが証を見せる時だ」
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