に。

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サウスティンホテルに入ろうとした3人であったが、報道陣をはじめとする人垣が陣取る玄関にうんざりしていた。 野次馬達がいるとは思っていた3人ではあったが、ホテルの外門を埋め尽くすほどの人がいるとは想像できなかった、無論、警官も動員されてはいるが。 迷っても仕方ないとは思いつつも、あの中に飛び込んで行くには度胸がいった。 その時、近くを通りかかった個人タクシーを藤汰が止め、乗るように2人に促す。 藤汰の機転に気付いた2人は、電気自動車に乗り込みホテル外門へと近づいていく。 近づくにつれて、幾つものフラッシュが光り、通すまいとタクシーの行く先に立つ者までいる。 タクシー運転手は手垢などが車につくことで、苛立ちを感じ舌打ちをしながら、クラクションを鳴らし、その後ろでは、申し訳なさそうに肩をすくめる3人。 それをバックミラーで見た運転手は、苦笑いをしながら 「新車買ってくれたら許すよ」と冗談交じりの言葉を3人にかけた。 それからというものの、カメのようにしか進まない車の中で、運転手とParadaiceについての話に花をさかせ、普段徒歩で5分もかからない距離を20分かけてホテル玄関につく。 「この距離なのにすまんなぁ~」そう言いながら、ワンメーターの倍額を告げる運転手に、お礼ですと言い、鞄から5つの帯がついた札束を取り出し、新車買ったらまた乗せて下さいと言い降車する慶。 煉と藤汰は若干ひきながら、軽い会釈を運転手にして車をあとにして、3人でホテル内へと入っていった。
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