いち。

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残暑が薄らぎ肌寒くなってくる季節の折、一人の男が、白の半袖長ズボンの制服を着用し、スリッパ履きの運動靴の底を擦りながら関西にある病院内の階段を降りていた。 (やっと一週間終わった、、疲れた、、) スタッフルームにたどり着いた彼は、気だるそうに同僚と労いの挨拶を交え、自席の椅子へと墜落するように座り、パソコンを一瞥した。 半開きの目を液晶から離して下を向くと、机の引き出しから濃紺の長財布に黒のスマホ、タバコと右下に小さくイニシャルが彫られた銀色のジッポを取り出し、ゆっくりと立つ。 同僚達の声が飛び交う中、トボトボと歩き出した彼はスタッフルームを出ると、ロックの神様がモチーフの自販機で金色パッケージのコーヒーを買うと喫煙所へと向かった。
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