―第二章―

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 雨が降ってじめじめしていたとある日の帰り道のことです――  「きゃわっ!?」  そう言ってわたしは転びました。前を見て歩けとはよく言いますが(実際は言われますが)、前を見て歩いていたのに転んでしまいました。とっさに顔をかばったので顔は痛くなかったのですが肘は痛くなくなかったです。つまり痛かったです。何より周囲の目が痛い――なんてことにはなりませんでした。――傷は痛くて痛くて涙が出そうになりましたけど。  だってわたしが帰るときには誰もいませんから。少なくとも学校の人は。学生さんは。  誰かがいると――特に同じくらいの年代の人がいると緊張して緊張してダメなんです。しんどいのです……。    だからいつも――毎日、他の生徒が全員帰ってから帰ることにしてるのです。しかも人気のない道を。最近は物騒らしいのでまだましな道を選んでますけど……。まあどのみち人はいませんです。  「だ、大丈夫かい?」  人いました。見事に気づいてなかっただけで後ろにいました。つまり周囲の目も痛かったことになってゆううつです。  「ほら、これで拭きな」  そういってその男の人(たぶん)は白いハンカチをくれました。そうでした、足怪我してたんだわたし。拭わないと……。ふきふきです。  「違う違うそっちじゃなくて」    足を拭こうとしたけど止められました。なんででしょう。
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