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いつの間にか、そんなりおママの背後に佇むもうひとりの影が、彼女の肩にそっと手を置く。
その手を握りしめながら、りおママの視線は薔薇の園のもっとずっと遥か遠くへ向けられていた。
ソレがナニを意味してたかなんて
その時のアタシには知る由もなかったんだ。
†††††
『あわDeダンスクール』は、生徒数1000人を越すマンモス魔法学校。
その名前は、国内外問わずに轟いているくらいの名門中の名門校なの。
学校長のアーワ先生の大宇宙級に広いお心で、入学試験は一切無しな上、校則無しの超フリーダムっていう校風が魅力的なんだけど…
学区外からも選りすぐりの優等生が集まるだけに、エリート要請クラスなんてのがあるくらいなんだから、アタシは肩身が狭くて仕方ない。
ホントなら学校まで、魔法のホウキやら竹刀やらでひとっ飛びできちゃう学年のハズなんだけど…
アタシみたいな落第生はそうはいかない。
自分の足だけが頼りなワケだから、体力にだけは自信があるんだ。親からもらった丈夫な体を活用させないなんて、魔法仕掛けで他力本願寺な世の中がいけないんだよウン。
「んもぅりおママったらっ
よりによって、ひなたくんの名前あんな大声で…ちょーハズカシイよぉ
おにいちゃんはわざとらしく間違えるしっ…みんなでアタシをからかって楽しんでるんだからぁ」
そう、りおママのご飯よりイヤイヤ同じくらいに大大大好きな憧れのキミ。イケメン同級生ひなたくん。
エリート要請クラス『イケムシャ50』の中でも、他がカボチャかミジンコにしか見えないくらいの超超イケメンにしてエリート。
アタシなんかが手を伸ばしたって、彼の吐き出す二酸化炭素にすら触れられないくらいの高嶺の花ってヤツなんだよね…
昨日も彼とのスウィートな一時を妄想したまま寝落ちしちゃったなんて、口が360度裂けても言えないったら言えないっ!
「はぁあ…ひなたくんっ
どーしてアナタはひなたくんなのっ?」
「ウニュ。あぷり。ソレみんな答えに困るウニュニュ。」
ニックんのフォローがヤケに生々しいのはさておき、アタシは歩くスピードを速める。
早く行かないと、彼の貴重な登校シーンを見逃しちゃうもんっ!
学校に近づくにつれて、アタマの上をかすめるように幾つもの影が風を連れてアタシをアッサリと追い抜いていく。
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