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「アンタのバカさ加減は一流よね。
まぁ私はお蕎麦が美味しければ何も問題は無いけれど。」
待ちに待ったハズのお昼休み。涼しげにお蕎麦をすするかほりちゃんと、魂の抜けたイレモノと化したアタシは、人気の無い校舎の屋上にいた。
マウントポジションでアタシのハートを文字通りワシ掴みにしてしまったひなたくんは
硬直した顔面を真っ赤に染めたまま、キレたイッカク他生徒数名に引きずられていったらしい。
そして絶妙なタイミングでひなたくんの召還してしまった『ソレ』
『計測不可能な乙パイぽいナニカ』は
ミッツ先生が大事そうに抱えてどこかに持ち去ったってゆー。
その切なすぎる光景を妄想しながら、アタシは自分のキュートなモノに死んだ魚同然の視線を落としていた。
「ねぇ…かほりちゃん…
どーしてアタシはFカップぢゃないと思う…?」
「でも今日の信州蕎麦は、つなぎの比がイマイチね。つゆとの絡みである黄金比が口の中で崩れてしまうわ。やっぱり、かなる屋のスルメ蕎麦の絶妙なテケテケさに叶う蕎麦はなかなか無いわね。」
「かほりちゃん…蕎麦とアタシとどっちが大」
「テケテケね。とにかくあぷり。アンタは今は何も知るべきじゃないわ。テストに合格する事だけ考えなさい。」
「ふぇ…てすと…
てすとてナニ?オイシイの…?」
かほりちゃんは無表情のまま淡々と言葉を繋げる。
紫色のサラツヤヘアーを耳にかける仕草とか、きっと全サラリーマンがキュン死するんだろうなウン。
「あぷり。世の中にはね。『身分不相応』って言葉が存在するのよ。
テストに出るわ。メモっておきなさい。」
「ふぇ…『みぶんしょうふけいたい』…ふぇ」
カッコだけの魔法ステッキを無気力に空中に振ってみせたけど
出てくる文字はやっぱり、腐の文字4つだけ。
この世界で息してる価値とかあるのかな?アタシって。
「ヌケガラはさておき。ここ最近、ヤケに学園にキナ臭い空気が充満してるわ。
『セガールプロジェクト』実際アタシが知り得たのは、アイツが警戒心を解いた一瞬に読み取ったその文言だけなのよね…
調べてみる必要がありそうだけど…迂闊に動くのは命取りだし。さて、どうしたものか。」
そう呟いたかほりちゃんは、イマイチなお蕎麦の最後の一本をゆっくりすすると
『その一角』を見つめる。
彼女のメガネの向こう側のクールな眼差しは
目に見えずとも確かに存在する強大なナニカを、真っ直ぐに見据えているようだった。
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