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「ふぇ?ナニそのケンタローの方って??
おとうさんは、マグロ漁船に乗ったまま帰ってこなかったんぢゃなかったのっ?!」
「まぁ黙って聞けオタンコナスが。
ヤツは平和ボケしすぎたこの世の全てに疑問を抱いていた。
そしてその謎を解明すべく身分を偽り、政府の機密機関に潜入を試みたのだ。
そこで目にしたモノは、ヤツの想像を遥かに凌駕した絶望的な世界の実態だったのだ。
この世は『ウンエー』が支配するツクリモノの世界であり、究極魔法『ジュンアーイカテゴーリ』を操る事で人々を操作し、キーワード『強非ギリギリ』の存在によってこの世界に見えない結界を敷いていたのだ。」
耳元をくすぐる静かな波音が、まるでアタシたちを試すように優しく響く。
アタシは兄の口から語られる、セガールプロジェクトの信じがたい真相に、ただ言葉を無くして聞き入っていた。
「ヤツは…ケンタローの方は、『セガールプロジェクト』と銘打ったプロジェクトの構築を試みたが…志半ばで資金が底を尽き借金にまみれ、ネカフェの片隅でその生涯を終えたと言う。
その手に握られていたスマホという名の旧世界の機械、すなわちそれは、セガールプロジェクトの全てが記された壮大なプロファイルだったのだ。
オレは母からこの話しを聞いて奮起した。
ふざけるな…ふざけるなよウンエー!オレたちはツクリモノなんかぢゃないっ
その上言うに事欠いて『ジュンアーイカテゴーリ』なる縛りの世界に、オレたちを隔離するなどヘソがマテ茶を沸かすが如し!
やってみせるぞ…オレがこの世界をブチ壊してみせるっ
オレはケンタローの残したスマホのデータ解析を進める事で、遂にウンエーの機密データの心臓部に行き着いた。
ウンエーが敷いたこの世界のバリア『強非ギリギリ』。ソレを撃破し『カテゴーリ』を粉砕する為必要なことは、純愛が似合うピュアな魂の殻を破り覚醒させることだった。それもウンエーに感づかれないよう、ごくごく自然にだ。
そこでオレは考えた。オレ自身が公に動く事は、即ち死を意味する。
ならばまずはピュアな魂が集う場に従事する同志を募ること。ヤツらは案外簡単に見つかった。
そうだあぷり。オマエの学校の教師どもだ。」
地平線へ傾く夕日と海の青とのコントラストが、世界を柔らかな銀色に染め上げていた。
反してアタシの心臓は尋常じゃないビートを刻み、ソレは行き場を失った涙となって目から溢れ出す。
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