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「…ヤツらと綿密なコンタクトを重ねた末に見出されのが『選ばれし者』
あぷり。オマエだったのだよ。」
「グスッ…ナニそのゴーインさっ
アタシにそんな大それた役…出来るワケないよっ」
「バカでピュアでドジっ子ぶってはいるが、この兄の腐の洗脳によって徐々にその殻を破りつつある、オマエが適任だったのだよ!
しかしこのプロジェクトの発動には、他にも大きな犠牲が必要だった。
まずオマエに発信機を付ける事。
そうだ。ニックはオレが長年地球儀の中で培養した発信機内蔵の妖精さんさ。
そして学園のみならず、母が敷いた結界である薔薇園は、カテゴーリに見合ったシチュとしてもウンエーを欺く格好の存在だった。
計画の肝が内蔵されたこの地球儀の存在をウンエーから守るためにもな。」
「…だから自宅警備員だなんてフザけたコト言ってたワケだ…
まんまと騙されてたんだねアタシ…腐腐腐腐…っ」
涙が止まらない。
だってわかんない。わかんないよそんなの!
「まぁ要するに、テストはあくまでもプロジェクトメンバー以外の人間と、ウンエーを欺くカモフラージュ。ダミーに過ぎん。
腐腐腐腐…天才すぎるだろう?
しかし学園はともかく、母の魔法とてあれだけの薔薇園に結界を張り続けるには限界がある。
そこでだ。一番手っ取り早くオマエの覚醒を早める手段として、オマエ自身の恋路を利用させてもらったのだよ。
安心しろ。ひなたはプロジェクトとは無関係だ。
しかしまさかあんなにダイナミックな起爆剤をプレゼントしてくれるとは予想外だったがな。お陰で大幅に手間が省けた。
あの一件でオマエは見事に殻を破りカテゴーリシステムに亀裂をもたらしたのだ。オレはオマエを誇りに思うぞ。」
夕日が水平線に吸い込まれる瞬間、兄がふいに鼻眼鏡を脱ぎ捨てた。
て…ナニこのイケメンッ!
夕日を浴びて仁王立ちをかます超絶イケメン兄は言葉を繋ぐ。
「まだ驚くのはこれからだぞあぷり。
この地球儀を左周りに回しながら解除の呪文を唱える事で、この世界の全てが塗り替えられる。
時はきた。腐腐腐腐っさぁあぷり。『選ばれし者』よ。オマエが次の世界の創造主になるのだ!」
「ちょっ…!
ちょっと待ってよおにいちゃんっ!!」
「そのすべてを解き放て!『セ・ガール!!』」
兄の高らかなる呪文と共に、途端に目の前の海が真っ白に染まる。
兄に向かって伸ばした手が空を切った。
アタシはただ怖くて怖くて
目を閉じた――
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