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「あぷり」
誰?
アタシを呼ぶ声が耳元でしてる。
「あぷり、その時が来たぜ」
なぁに?なに『その時』って…?
なんだろ?胸が
胸の奥が
ムズムズしてしょーがないよ…
「あぷり、お前はどう思う。」
「んん…っ、なぁにぃおにいちゃん?」
「あぷり、お前はどう思う。」
「うーん…だからなにが?」
「あぷり、お前は」
「あーっ!
んもー、うるさいよおにいちゃんっ!」
飛び起きたアタシの目に飛び込んできたのは
兄の顔。しかも逆さま。
って言ってもナゼかいつも鼻眼鏡をしてるから顔は見たことないんだけど。
朝っぱらからウソでしょ?
「なにをそんなにコーフンしているあぷり
ポテチでエブコインを買う魔法でも開発したのか」
コレはアタシの兄・リュウジ。
空を飛ぶ魔法だけが取り柄の、自称・自宅警備員こと42才。
産まれた時から、ナゼかアタマに地球儀を乗せてる超カワリモノ。
アレ?こーゆうのを『腐』って言うって、親友のかほりちゃんが言ってたっけ。
その兄が今、寝起きの妹の目の前で逆さまになって浮いているワケなんだけど…
「朝からイミわかんないコト言わないでよぉ!
って、お前はどう思う?ってなんのことおにいちゃん?」
「あぁアレか。ただの目覚ましだ気にするな。」
アタマの地球儀を指差しながら、他人事みたいにそう言い切る兄。
目覚まし時計付いてる地球儀なんて聞いたことないよっ。
「またイタズラしたんだね…
もぉママに言いつけるからっ」
「腐腐腐腐…ヤレヤレ小学生のくせに短気な妹だな。
そんなことでは到底Fカップ以上のキョヌーになれんぞ」
「なれなくてケッコーですよーだっ
って…アレ?ニックんは?」
兄のエロい視線(たぶん)を強引に避けつつ、アタシは彼の姿を探す。
「ウニュ。あぷり。おはウニュ。」
可愛い擬音と共に、兄の頭の地球儀からピョコンとヘビ頭が顔を出す。
「んもーニックん!おにいちゃんの頭の上なんかで寝ちゃダメって言ってるのに!」
パタパタと青い羽を揺らして浮かび上がった彼。通称・ニックん。♂。(なんとなく)
アタシの誕生日に、兄がプレゼントしてくれた、ナゾのゆるキャラ生物。
ネコ似のプリティーフェイスの額に浮き出た『ニク』の文字から、アタシが名付けたんだけど…
ゆるキャラのクセに、ヘビのシッポと悪魔っぽい羽とかがアンバランスすぎて、なんか納得できないのはアタシだけなのかな?
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