赤眼の女

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「はい!、そこで回って!!、笑顔を絶やさない!」 部室の後ろ半分を使って、メイド服姿の3人がマイク片手に、桜の指導の元、踊りのレッスンに励んでいる。 「まだまだ、元気が足りないわよ!!」 「桜はん!!、ぽっちゃり体型のワテに無茶させんといて!!」 体つきが肉感たっぷりの貴梨子にとって、このレッスンだけは地獄の時間だった。 「みどりも、いつものキレが無いわね…」 ガーネットの件から、みどりの表情は冴えなかった。明らかに、ナニかを抱えこんでしまっているようだった。 「はぁい、ちょっと休憩に入りまぁーす」 桜は手を叩いて、全員に一息入れる様に促すと、みどりの方に歩み寄り、耳元で囁いた。 「みどりちゃん、ちょっと気になるコトがあるんだけど」 桜の言葉にみどりは体をビクッと振るわせて、過剰に反応する。 「な、なんですか、桜さん」 普段、桜に対して"さん"付けなどしない、みどりのこの反応は明らかに怪しかった。 「みどり、自分一人で抱え込んでたら潰れちゃうよ」 みどりは、敢えて理由(わけ)を聞かない桜の気づかいに彼女のなりの優しさを感じていた。 「あっ、勘違いしないでね、余計な仕事を増やしたくないだけだから」 結局、面倒事がキライなだけで、みどりの事など最初から眼中になかったようだ。 「やっぱり、アンタはそういう女なんだ…」 「あんたもね、やるなら徹底的にしなさいよ、中途半端なのが一番厄介なの」 みどりの立場を見透かした様な桜の一言が彼女の心に突き刺さる。
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