ヒトの造りしモノ

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横浜みなとみらい地区の一角にランドマークタワーを凌ぐ、高層ビルが立っている。世界的大企業集団アイアン・マッスル・フォルディングスの日本支社である。最上階の大会議室に、スーツ姿の12人の重役達が集まっていた。 「ゴッドマンCEO(最高経営責任者)、全員集まりましたが、よろしいかな?」 禿頭に長い顎髭の老人が、CEOと呼ばれる若い男性に了承を仰いでいる。 「かまわない、進めてくれ」 老人の名前はガスパー、アイアン・マッスル・フォルディングスの極東地域統括部長だ。 「計画の進捗状況を…」 薄暗い会議室の空間モニターにさまざまなデータやグラフが入れ替わり表示されていく。 「CEO、かなり経費が費やされていますが、回収出来るのでしょうな…」 苦言を呈しているのは、序列第二位のポセイダル上級役員だ。 「言葉が少し過ぎないかねポセイダル君」 ガスパー統括部長が、ポセイダル上級役員をたしなめるが、ポセイダルは構わず更に内情の公開をする様にゴッドマンCEOに迫った。 「ポセイダル上級役員、心配を掛けて、申し訳ない経費は極力掛けないようにする。そう、それから君が担当している重工部門のAI搭載型アンドロイドの開発状況がはかばかしくない様だが、どうかね?」 ゴッドマンは、逆にポセイダルに質問を仕返すと、ポセイダルは急に狼狽し始めたのだった。 「ポセイダル君、キミの気持ちも分からなくもないが、油断は禁物ではないかね?」 ゴッドマンの静かだが、有無言わせぬ威厳に満ちた言動にポセイダルは圧倒され何も言い返せなかった。 「次の議題に移ろう」 ゴッドマンの低いが良く通る声が大会議室に響いた。
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