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「───で?」
「あ?」
腕を組んで、気怠げにドアに凭れ掛かると、誉の探るような眼差しとかち合う
『その下っ手くそな茶番、いつまで続けるつもりなんです?』
「…………」
その言葉に、暫く無言を貫くと誉がニヤッと口角を上げた。
「それはお互いさまだろ?お前こそ、大根役者じゃねぇーか」
んで?いつから気付いたんだ?そう、楽しげに聞いてくる誉のふざけた顔をぶっ飛ばしたくなったのは…この際、胸の内に閉まっておきましょう。
「…つか、お前。
今、失礼なこと考えただろ」
「さあ?どうでしょうね…。」
適当に流せば、誉が『ちょ、おま…っ』と言いかけた口を閉じ、顔を引き攣らせていますが。なぜ、私が誉の疑問にわざわざ答えなければいけないのでしょうか。否、答える必要はありませんね。
「…さしずめ、確信を得たのはさっきか?」
ハァ、と溜め息ついて、仕方なしに答える。誉も伊達に前の学園で会長をやっていたわけじゃない。どうせ、#大凡__おおよそ__#のことは検討ついてるでしょうに。
「ハァ、そうですよ。…確信があったわけじゃありませんでしたが、前の学園で毛玉とそれに堕ちた取り巻き連中の身辺調査をしたときに、貴方のことも調べましたが、貴方だけ、言動と行動。それから、調査資料に違和感を覚えたのですよ。…これで納得いただけましたか?」
「へぇ… んで?お前は俺に違和感を覚えたのに、敢えて知らなかったことにした、と?」
(……やけに食い下がりますね。)
「ええ、彼のことを好きだと言うわりには、彼が親衛隊の子たちに呼び出しされても、助けに出なかったばかりか、毛玉が説教という名で親衛隊の子たちを殴り、委員長たちが毛玉に賛同しても、貴方だけまるで傍観者だった。それも、一度や二度じゃないでしょう?」
「ほう?」
………。
「その、馬鹿にしたような言い方やめて頂きたいんですが」
深い溜め息をつく。
「別に馬鹿にしてねぇよ。ただ、わざわざ転校までしたんだ。てっきり、お前もそうだと思ったから意外だな」
そう言って腕を組んだ誉は上を見上げる。───本当に、この人は私を何だと思ってるのでしょうか…。
「まるで、何かを見極めるかのように、彼を監視しているように見えました」
「へぇ?」
「それらの関連性から、あなたのお家騒動に関係してるのではないかと、簡単に推測したまでです」
「………んま、大体合ってんな。俺が毛玉にしろ、親衛隊にしろ、仲裁に入らなかったのは自分のケツは自分達で拭えってな。親衛隊にしろ、毛玉にしろ、自業自得だろ?親衛隊は毛玉に不良共を使って、手を出す気だったし、毛玉は毛玉で過剰防衛だ。双方に罰があるのは当然だろ」
手続きに少し時間が掛かったが、処分が下ったときにはお前、いねぇし。と恨めしげに見てくる誉がうざいです。
「とは言っても、毛玉と取り巻き連中があの調子じゃ、次に俺がどうこうするより、ウィリアムズが先に動きそうだ」
(……ま、あの ウィリアムズですからね。)
そこは賛同しますよ。
「あの毛玉が人気ランキング上位者ばかり、絡んでるだろ?おまけに、風紀と、うちの生徒会も取り巻きに付いたあげく、あまりに絡んで来るからな。うちの親戚連中の差し金か、どうか…見極めてたんだ」
お前に何かしら言われるかと思ってたら…まさかの、転校とはな?と腕を組んだまま、気怠げに壁際に背を預ける誉が半眼の目で訴えてきますが、あなた、人のことが言えますか!
「どっちにしろ、早かれ遅かれ辞めるつもりだったんだろ?」
「……何のことです?」
確信を得ているような言い方に微かに眉を寄せた。
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