褪色

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褪色

空が 低い処に在って 雲が 電線に絡み付いて居た。 車が 往来(まち)を行き来して 人が 絶えず動いて行く。 時が 滞(とど)まる事は無くて 君は 僕を振り返ら無い。       「僕の聲は低い空に透き通って        君の許へは届か無かった」 月が 近い処に在って 闇が 境界を創って居た。 光が 懶(ものう)い影と為って 嘘が 煌々と輝く。 色が 深まる事は無くて 音が 君を消して行った。      「君の視線は近い月に跳ね返って       僕の頬を掠めて行った」 褪せた想い出が君の影を纏い、僕は居られ無く為った。
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