言葉は要らない

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黒のトランザムが海岸を訪れた。 降りて来たのは36歳になったソフィアだ。 「じゃあ、探してみるわね。」 『今年は期待できるかも知れませんよ。』 あれから20回目の記念日を迎える。 そろそろ戻っても良い頃だった。 「記憶があれば良いんだけど……。私のこと分かるかな……。」 『あれば分かると思いますよ。ソフィアはママに似てますから。』 「そう願うわ。ママの方から見つけてくれなくちゃ分からないもの。」 『ええ。どんな姿か楽しみですね。』 「パパ、あまり期待しないでね。今年とは限らないんだから。」 『分かってます。でも期待せずにはいられません。』 「気持ちは分かるけど……覚悟だけはしておいてね。」 そう言ってソフィアはビーチへ向かった。 今日はいつもより人がいる。 ママがいたとしても見つけてもらえるだろうか。 不安そうに歩き回るソフィア。 しばらくし、やっぱりいないと諦めかけたその時━━。 「ソフィア……?」 聞き覚えのある声に後ろから名を呼ばれた。 ゆっくりと振り向く。 「やっぱり!ソフィアなのね!?」 抱きつく女性に驚きを隠せない。 .
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