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さすがにこの暑さでスーツと階段は正直応えた。 ネクタイをずらし、首筋に隙間を作ったりと努力してみても汗は全身から溢れ出てくる。 途中、左手に大中小のお地蔵さんを拝みながら、残り半分の石段を必死で登る。 こんなに何かに集中するのはいつぶりくらいだろうか。思い出すのは学生の頃に味わった体育会系の出来事。部活に汗を流していたことが頭の中で蘇る。 『ひろかず君。ひろかず君、、』 この声は、忘れもしない。 そして、やっと登り切る。 呼吸が虫の鳴き声のように安定感がなく、持病の喘息が多少出ていた。 少し無理しすぎたようだ。 正面に延びた砂利の先に本堂を見つめると、日陰になる部分があったから、すっぱいツバの飲み込むみ日陰を求めた。
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