第1話『分身』

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ーーーー はやては、那須塩原を東北方面に走り抜けていく。 ーーもう少しすれば【仙台】に着く。 窓には6月の代名詞とも言える雨粒がまとわり付き、私の触れている場所だけが、優しく曇った。 「ママ、まだ着かないの?早くおばあちゃんに会いたい」 「しー。もう少しだから大人しくしてなさい」 娘の【カナ】は足をバタバタさせ、退屈さをアピールする。 無理もない。 まだ5歳の女の子に東京から仙台までの移動は軽い拷問だ。 新幹線だとしても、1時間半の座り通しは酷だろう。 車両が滑り込むようにしてトンネルへ入ると車内アナウンスのメロディも耳へ滑り込む。
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