3 ようこそ、地獄の裁判へ

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『ここへ生身の人間が入り込むとは珍しいこともあるものだ。そんなにイチが憎いと見える。恋人であるさやかを亡き者にしたのだから仕方あるまい』 この裁判長の言葉にハッキリと否定したかったが、怖くて何も言えなかった。 僕の前に立つ、小巻が振袖をバンと払うと無駄ない質疑が飛んだ。 「名前と生年月日。西暦で頼むぞ。あと、職業も」 遠くから見るのと、近くで見るのではやはり迫力が違う。 小巻の額には薄く細い目があり、たまに目が合う。その目は人の物でないとわかったのは、金色に染まっているからだろう。 「秋川 たいき。1984年6月16日生まれ。職業は施設管理」 不思議なもので台座に立ち、そこで言葉を挙げる度に上部から光が当った。スポットライトのような役目だと思う。
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