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「そーっと?覗いて?」 確かに記憶とはいい曖昧である。 こうやって人は、大切な何かも自然と記憶から抹消していってしまうのだろう。だけどそれが何よりの宝物だから、いつの日も忘れえぬ思い出に変えなければならない。そう、イチもさやかも。 ーー生涯忘れぬ出会い、最高の出会い。 考えてみれば、さやかもイチも二人が親子みたいな性格だとやっと気づいた。 あの負けず嫌いなのにハッキリと物事を言えない矛盾した性格。似た物同士だ。 顔を思い出すだけでクスリと笑いが込み上げる。グッと押し殺すようにしているともう石段を登り切っていた。 本堂のほうに視線を向けると、そこに同い年くらいの女性とオーバーオールを着た女の子が縁側に腰を降ろしていた。 ーー明日へ繋ぐ者。それは、きっと『忘れない心』ということなんだろう。 ズボンのポケットにダイヤモンドみたいに光るアクセサリーを入れていたことをすっかり忘れていた。 カッパの涙だ。 あれは確か、子供が喜ぶんだっけ?
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