第2話『自分を知ること』

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思えば、俺がこうなったのにも原因がある。 恥ずかしながら、この三十路ついでに胸がときめく『恋』をしてしまったのだ。高校生以来の胸の高揚にそれからというもの寝付けない日々が続くようになった。 さらに恥ずかしい事に俺は相手の名前も、年も連絡先も知らない。 今年の初詣、俺は一人で岩沼市にある竹駒神社へ行った。 そこはもはや歩く場所がないくらい人でごった返し、祈願するにも相当な時間がかかった。 だが、彼女はそこにいたんだ。 長い黒髪のストレートにキリっとした眉毛、柔らかそうな色艶の唇。純白という言葉がしっくりくる絹のような肌。 彼女は神社の社務所の前で御守りを売っている巫女さんだった。 5円玉を握りしめたままの俺は何かの引力に引かれるようにして彼女に吸い込まれていた。
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