第2話『自分を知ること』

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「わりぃ。んまぁ?そうかな?気疲れねぇ。でも、疲れてるなら逆に寝れるんじゃないのか?」 沼田は片側の口角を上げて、軽く否定する。 俺だって馬鹿じゃない。 そんなことを本気で言うもんか。 「こういう問題は大抵、彼女がいれば解決していきますよ。で、佐伯先輩はいつから彼女いないんすか?」 痛い、それはそれは痛々しい質問。 ハッキリ言って、もう5年以上いやしない。 「原因とか考えたことあります?」 ない。 小さな喫煙所に俺の否定が鮮明に響く。 そういえば、彼女がいない原因なんて気にもしていなかった。 今の会社に入って、毎日スーツで過ごすようになってから、忙しさに過負けて、理由とか原因とか考えたことはなかった。
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