~運命を拓く~

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 呼び込みの効果はすぐに表れた。多感な少女達は露天の銀細工を、宝石を見るかのような目つきで集まる。やがてその中の一人がノロードに値段を尋ねてきた。 「ねえ、これいくらなの? 」 「どれも100ガルドだよ。学生の財布に優しいお手ごろ価格さ」  そのノロードの言葉に、少女達は一層ざわめきたつ。こんな良品の装飾小物が、硬貨一枚とで交換出来る事に少女は、我先にと硬貨を差し出す。 「私もらうわ! 」 「これちょうだい! 」  対応に追われながらノロードは、飛ぶように売れてゆく商品彼女達に渡した。あっという間に完売まで漕ぎ着けたノロードは、売れ残りがない事を確認する。 「…あ、やっぱり盗られてる。あんなに人が多かったら盗ってく人も居るよな…」  きちんと代金を払わずに、装飾小物をふんだくった少女達にノロードは心を痛める。しかし目標の完売まで出来た事に満足し、別の場所で売り子をするシルストの帰りを待った。  人の流れの中を一人留まるノロードは、この中にマナミアが歩いていないかと目を凝らして見た。実際彼女は行き先も告げずに、この街で別離を選んで別れた。別れ間際の彼女の強い想いを秘めた顔を思い出し、ノロードは道の端からの傍観を止める。 「…お願いします。引き合わせの象徴術よ…、オレとマナミアを再び引き合わせてくれ…」  留まる事をしない人の流れの中で、祈る仕草をノロードは堂々としてみせる。多色な有色髪の人の中で、一際映える真っ赤な髪を持つノロードの行動は、堂々としすぎてるが故に周りからしてみれば異様に見えた。 「そんなとこで何やってんだよ、ノロード」  街の中で誰よりも浮いていたノロードに、別の所で銀細工を売り出していたシルストが歩み寄る。どうやら彼の方も完売した様子で、通行人を掻き分けてノロードに言葉をかけた。 「お前かなり目立ってるぞ? 通行人のほとんどがノロードの事二度見してる」 「あれ? オレそんな目立つ事したかな」  自覚はないと言ってみても、周りの人の様子を見る限りだと、まさしくシルストの言う通りだとノロードは頷く。
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